このページは、病気の事・予防医学など、動物達に関する事について、
飼い主の皆様にぜひとも覚えておいていただきたい「大切なおはなし」を、いつでもご覧いただけるようにアーカイブ形式にしています。

「あれはどういうことだったかな?」「あの病気ってどういう症状だったかな?」
「フィラリアっていつからお薬を始めるのかな?」「こういう時、どうしたらよいの?」
など、疑問に思った時にいつでもここを開いてご覧ください。

避妊手術・去勢手術のすすめ

今回は、避妊手術をしていない雌犬でよく診断される『乳腺腫瘍』について紹介し、去勢・避妊手術をおすすめする理由についてお話させていただきます。乳腺腫瘍とは、乳腺組織に“できもの”が出来る病気です。大きさは様々ですが、時間が経てば経つほど大きくなり、大きくなり過ぎると自潰してしまうものもあります。自潰すると中から血液や液体が出てきます。そうなると犬猫は気にして舐めたり、咬みちぎったりしてしまうこともあります。“できもの”には全て、良性・悪性があり、犬の場合の悪性率は50%、猫の場合は90%と言われています。悪性の場合、手術で腫瘍を摘出しても、また同じ場所に再発したり、近くのリンパ節や肺などの臓器に転移したりします。場合によっては、これらが原因となりその犬猫は命を落とします。

★写真(左)のヨークシャテリア(12歳3カ月齢、未避妊)は、体と比較してとても大きな乳腺腫瘍がありました(中央)。摘出手術を実施し、ひとまず元気に退院しました(右)。

犬は人間よりも乳腺腫瘍が出来やすい動物です。なるべく出来ないようにするためには、何か方法があるのでしょうか?ひとつには、生後6〜8カ月齢に避妊手術をしてしまうことです。このころに避妊手術をすると、乳腺腫瘍の発生率がかなり低下することが報告されています。「室内飼いだから、妊娠はしないし・・・」「健康な体に傷をつけるのは抵抗が・・・」などと思う事はあると思いますが、悪性の腫瘍が出来てしまってからでは遅いのです。

乳腺腫瘍は早期の避妊手術によって防げる病気です。避妊手術を受けていない犬猫ちゃんは、健康なうちにぜひ手術を受けることをお勧めします。これは、雄についても同じことです。若いうちに去勢手術をすれば防げる、いくつかの病気があります。以下に詳しく解説します。



■避妊手術・去勢手術について

 当院の避妊手術は、基本的には卵巣のみを摘出する術式を採っています。去勢手術は、精巣を摘出する手術です。卵巣も精巣も、左右にひとつずつあります。どちらも手術前の血液検査等で問題が無い若い犬猫の場合には、日帰りで手術をお受けいたします。

生後6〜8ヵ月齢を目安に手術をお勧めしています。というのも、生後6カ月齢までに、ワクチン接種による伝染病予防が完了し、体も大きくなって体力もついているはずだからです。麻酔や手術のストレスは、ときに犬猫の免疫力を低下させ、病気の発症につながったりもしますので、手術は万全の体調で臨みます。

当院では基本的に、月・火・水・金・土曜日の午後に手術を行います。事前にご予約を入れてください。手術当日は朝の食事を抜いて(お水は与えても結構です。)午前中に病院に連れて来ていただきます。


■避妊手術のメリット

メリットとしては、

・望まない妊娠〜出産の防止

・発情出血の消失、偽妊娠の回避(犬のみ)

・発情に伴う体調の変化やストレスからの解放

・子宮に関連した疾患の予防(子宮蓄膿症、子宮内膜炎、子宮や卵巣の腫瘍)

・乳腺腫瘍の予防(犬のみ)

・他の犬猫との交尾によって感染する疾病の予防

などが挙げられます。

乳腺腫瘍に関しては、避妊手術をしていない犬では、26%という高い確率で発症しますが、初回発情までに避妊手術を受けるとこの発症率を0.05%にまで下げることができます。初回発情とは、生後初めての膣からの出血で、およそ8カ月〜1歳6カ月齢までにおこります。この出血は発情のシグナルとなり、平均14日間続きます。その後、この発情出血は1年に1〜2回おこります。

猫では、発情に伴う膣からの出血というものはありません。そして、早期の避妊手術で乳腺腫瘍の発症率が低く抑えられるという報告もありません。しかし、猫の発情は犬よりも激しく、1日中大声で鳴きわめき、ときには尿をあちこちにかけるマーキング(尿スプレー)をし、家にいる猫は、飼い主さんの家の出入りのちょっとしたすきに家を飛び出してしまうこともあります。

また、子宮蓄膿症は子宮に膿が溜まる病気ですが、避妊をしていない高齢の雌犬では発症率が非常に高くなります。(猫でもおこります。)子宮蓄膿症は、放置すれば子宮内の細菌毒素が全身をめぐり、死に至る怖い病気ですが、避妊をすれば確実に予防することが出来ます。



■去勢手術のメリット

メリットとしては、

・放浪、ケンカによる怪我や事故の抑制

・尿スプレーなどの問題行動の軽減

・発情に伴う体調の変化やストレスからの解放

・他の犬猫との接触によって感染する伝染病の予防

・精巣に関連した疾患の予防

が挙げられます。特に雄猫は発情に伴って放浪し、雌猫をめぐって喧嘩をし、さまざまなところに臭いの強いおしっこをかける『スプレー』行動がみられますが、早期に去勢手術をすれば、これらの行動をかなり抑えることが可能です。

また、精巣に関連した疾患、具体的には精巣腫瘍、前立腺肥大、前立腺膿瘍、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫などの疾病は、早期の去勢手術により発症率がかなり低下します。


■避妊手術・去勢手術のデメリット

 一方デメリットとしては、ホルモンバランスの関係で太りやすくなりますが、これは正しい食事と適度な運動により、コントロールできる場合がほとんどです。

また、避妊した雌犬でごく稀に、尿失禁(尿漏れ)や脱毛がみられる場合があります。



★乳腺腫瘍の一例

日本猫で、10才の時、乳腺腫瘍が発覚しました。手術を実施し一度は回復しましたが、17才で再び乳腺腫瘍が発生し、翌年には肺転移が見つかりました。この写真は肺転移が多数みられる胸部のX線写真です。なお、この症例は肺転移が発覚して2カ月で、残念ながら亡くなってしまいました。


文責:田辺獣医科病院


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