このページは、病気の事・予防医学など、動物達に関する事について、
飼い主の皆様にぜひとも覚えておいていただきたい「大切なおはなし」を、いつでもご覧いただけるようにアーカイブ形式にしています。

「あれはどういうことだったかな?」「あの病気ってどういう症状だったかな?」
「フィラリアっていつからお薬を始めるのかな?」「こういう時、どうしたらよいの?」
など、疑問に思った時にいつでもここを開いてご覧ください。

猫の尿路結石症について

【尿路結石症(尿石症)とは】
腎臓、尿管、膀胱、尿道(つまり尿が流れていく通路)に結晶や結石が発生する病気です。
結石には種類があり、その構成成分によって分類されています。大きさは、砂粒から数cmの小石状のものまで様々です。


【症状】
・トイレに行く回数が増える。
・頻繁にトイレに行くが尿は少ししか出ない。
・うろうろ落ち着かない。トイレでじっと座っている。
・排尿時に痛がって鳴く。
・血尿が出る。
・トイレ以外の場所で排尿してしまう。
などの症状が現れます。
尿道に結石が流れて詰まってしまうと、尿が出なくなります(尿道閉塞)。
尿が出なくなると、体内の老廃物(=体にとって毒物)が排出出来なくなり、それが3日続けば『尿毒症』という命にかかわる状態になり、危険です。
雄は雌より尿道が細く長いため、結石が尿道に詰まりやすい傾向にあります。


【原因】
猫に多い代表的な結石は、『ストルバイト(リン酸アンモマグネシウム)』と『シュウ酸カルシウム』です。
ストルバイトは、尿がアルカリ性に傾くと出来やすくなります。
反対に、やや酸性に傾くとシュウ酸カルシウムの結石が出来やすくなります。
酸性かアルカリ性かの他に、尿中にマグネシウム、リン、カルシウムなどのミネラル成分が多いと、結石ができやすくなります。
あまり水分を摂らないでいると尿の濃度が高くなり、そうなるとミネラル成分が多くなります。
また、猫自身の『結石が出来やすい体質』や食事内容、生活習慣も結石形成に関わっています。


【検査】
一般的な結石は、レントゲン検査でその結石自体を確認出来ます。
しかし、レントゲンでは確認できない結石も存在します。レントゲンで確認できない結石を疑った場合には、エコー検査や造影レントゲン検査、尿検査などで結石を確認します。


上:1日ドッグで撮影したマサヲちゃんの腹部レントゲンです。矢印の先にうっすらと丸い結石が2〜3個確認できます。
下:膀胱付近の拡大です。


【治療】
結石にはいくつかの種類があり、尿のpHを変えることによって、あるいは特殊な飲み薬を内服することによって、溶解する結石もあります。
ただし、溶解して消えて無くなるまでには何カ月もかかりますし、全く溶解しない場合もあります。
それよりもまず、膀胱の中にある結石の種類は、実際のところは膀胱から結石を取り出して、成分分析をしないとわかりません。
尿を少し採って顕微鏡で観察すると、結晶がみられることがあります。
この場合は、その結晶の種類を手掛かりに結石の種類を予測し、溶解させるための治療を始めることもあります。
ただし、尿中の結晶成分と結石中の構成成分は、全く等しいとは限りません。
2種類以上の成分が混ざり合って出来ている結石、というものもあります。
たとえばマサヲちゃんの場合は、『尿酸アンモニウム』60%と『ストルバイト』40%の複合結石でした。
尿中には、検査した限りでは結晶は認められませんでした。
従って、結石のサイズが非常に小さく結石の種類が確定している場合には、結石を溶かす薬や療法食を利用して経過をみます。
石が大きい場合や尿道に詰まってしまっている場合には、手術で取り除くことを考えます。


【予防】
尿路結石症は再発しやすい病気です。
せっかく手術で膀胱の結石を摘出したのに、その後の生活を全く変えなかったので半年後にまた膀胱に結石がみつかる…という話も稀ではありません。
まず、結石の種類が判明したら、その結石が出来にくい食生活(療法食)に変更します。
また、水をたくさん飲ませる工夫をしましょう。
たくさん水を飲んでたくさん排尿するのが、結石予防の基本です。
適度な運動は、肥満防止と飲水量を増やす効果があります。『猫に運動』といってもなかなか難しいと思いますが、猫じゃらしで遊ぶ時間を設ける、キャットタワーを設置する、などの工夫をしてみてください。
それから、猫が排尿しようと思ったときに我慢してしまうことがないように、トイレは清潔にして猫がいる場所の近くに設置することも大切です。
肥満は運動量を減らしますので、ダイエットも心掛けてください。


さて、マサヲちゃんの膀胱結石〜摘出手術についてのお話の続きです。当日のマサヲちゃんはとても緊張していました。


膀胱内の結石は結局直径6mm未満の円盤状のものが3つありました。
これら全て摘出し、 今後の治療方針を決めるために、結石を検査センターに送って構成成分を調べてもらいました。
通常、膀胱結石の手術の場合、術後に問題なく排尿が出来るかどうかを観察するためしばらく入院となります。
マサヲちゃんは、病院という慣れない環境に置かれて緊張していたためか、術後、食事を全く食べませんでした。
やむなく予定よりも早く退院させ、自宅で様子を見てもらうことにしました。
するとマサヲちゃんは、自宅に帰って安心したのか、すぐに食事を摂ったそうです。
1週間後、結石の分析結果が返ってきました。
その結果、マサヲちゃんの膀胱にあった結石は、『尿酸アンモニウム』60%と『ストルバイト』40%の複合結石でした。


文責:田辺獣医科病院


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