このページは、病気の事・予防医学など、動物達に関する事について、
飼い主の皆様にぜひとも覚えておいていただきたい「大切なおはなし」を、いつでもご覧いただけるようにアーカイブ形式にしています。

「あれはどういうことだったかな?」「あの病気ってどういう症状だったかな?」
「フィラリアっていつからお薬を始めるのかな?」「こういう時、どうしたらよいの?」
など、疑問に思った時にいつでもここを開いてご覧ください。

マダニが媒介する病気について

【マダニとは】
マダニは8本脚からなる節足動物で、昆虫ではなくクモやサソリに近い生き物です(昆虫は6本脚ですね)。
家の中の布団等に住むダニ(イエダニやヒゼンダニなどの微小ダニ)とは異なり、固い外皮に覆われ、大きさは吸血する前のもので約3〜4mm(フタトゲチマダニの場合)あります(写真右)。
これはイエダニの約8〜10倍に相当します(微小ダニの大きさ はおよそ0.2〜0.4mm)。
日本に生息するマダニのうち、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニなどの約20種類が犬に寄生することがわかっています。

マダニの唯一の栄養源は、動物の血液です。幼ダニ・若ダニは発育・脱皮のため、成ダニは産卵のために吸血します。
そしてこの吸血の際に、さまざまな病原体を、吸血した動物にうつします。病原体には、原虫やウイルス、リケッチア、マイコプラズマ(リケッチア・マイコプラズマ:細菌とウイルスの中間の大きさと性質を持っている病原体。 つまり大きさはウイルス<リケッチア・マイコプラズマ<細菌 となります)、細菌などがあります。マダニはこれらの病原体の、重要な媒介者であると言えます。


【マダニが媒介する犬猫の代表的な病気】
●犬のバベシア症
マダニの中には、バベシア(Babesia)という原虫を持っているものがいます。
そのマダニが犬を吸血するとき、犬の体内にこの原虫が侵入して感染が成立します。
バベシア原虫は、犬の赤血球内に寄生して赤血球表面の膜を変性させ、破壊します。
従って、溶血性貧血、黄疸、血小板減少、発熱、脾腫(脾臓が腫大する)、食欲不振などの症状が出現します。重症の場合、死に至ることもある怖い病気です。
しかし、バベシア症には地域性があることが知られています。福井県にあります当院では、滅多に見かけない病気です。

●猫ヘモプラズマ感染症(Feline haemoplasma infection)
マイコプラズマの一種、ヘモプラズマの感染によって起こる病気です。
感染経路はいまだに判明していませんが、ノミ・マダニが媒介する可能性も示唆されています。
この病原体も、赤血球に寄生して赤血球表面の膜を変性させ、破壊します。従って症状は、赤血球が大量に壊れることによる黄疸、重度の貧血となります。
この感染症は、当院でもしばしば確認されます。

マダニはこの他に、動物だけでなく人間もときに吸血し、感染症を引き起こす事が知られています。
2013年に初めて日本で死亡例が報告された、重症熱性血小板減少症(SFTS)は、マダニが媒介する人間の感染症です。


【重症熱性血小板減少症(SFTS)について】
FTSは、近年、新聞やニュースでも報道されている、マダニが媒介する感染症のひとつです。
SFTSウイルスを持ったマダニに咬まれることで感染します。
2013年1月には、日本国内で海外渡航歴の無い方がSFTSに感染していることが初めて報告されました。
それ以降、西日本を中心にSFTS患者が確認されるようになっています。
潜伏期間は6日〜2週間で、主な症状は、発熱・消化器症状(嘔吐・下痢・食欲低下・腹痛)です。
その他、頭痛・筋肉痛・神経症状(意識障害・失語)や出血症状(皮下出血・下血)が起こるようです。
致死率は6.3%〜30%であり、現在、有効な薬剤やワクチンは開発されていません。
さらに、SFTSウイルスは中国の研究者が発見したウイルスですが、日本の患者から分離されたウイルスは、中国のものとは異なることが判明しています。これは、日本に固有のSFTSウイルスが存在していることを示唆しています。
2016年7月現在、日本国内で195名の方が発症したと報告されています。
男女比に差は無く、発症年齢は高齢に集中していました。
発症地域は、西日本を中心とした20府県で報告されています。福井県では、発症の報告はありません。
本病の発生が先に確認された中国では、主なベクターはフタトゲチマダニであり、 山羊、羊、牛、犬等の動物が高率にSFTSウイルスの抗体(抗体:SFTSが体内に侵入したときに作成される、SFTSをやっつけるための武器だと考えてください。)を保有していたと報告されています。
日本では、命名されているマダニだけでも47種存在しますが、媒介するマダニの種類や動物との相互関係は未だ解明されていません。
なおSFTSウイルスは、人から人への感染は報告されていますが、動物から人への感染は、『今のところ』報告されていません。
そして、人間以外の動物は、このウイルスに感染しても発症はしないようです。


【予防】
マダニが媒介する病気を防ぐためには、マダニに咬まれないようにすることが大切です。
『家の中で飼っているから大丈夫』と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、近所を散歩させただけでも、マダニが付いてしまう可能性はあります。
室内飼いの犬や猫も油断できません。また、マダニは山や河原の土手などの草むらに好んで生息しているため、山の近くにお家がある方や、お散歩コースにそういった場合が含まれる方は特に注意しましょう。

参考文献:国立感染症研究所のホームページ
文責:田辺獣医科病院


▲ページトップに戻る