レーザー治療について

【レーザー治療とは】

レーザーの医療分野への応用は1960年代まで遡ります。人医眼科において、網膜剥離の手術に使われたのが始まりのようです。
日本では1980年前後から眼科でレーザー治療が始まりました。現在では、様々な分野でレーザー技術が応用され、動物の治療にも利用されています。

 

 

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【レーザー治療の多様性】

レーザー治療の特色として、外傷からがんまで様々な疾患に対応できることがあります。
がん治療等に関しては、まだ治験の域を出ないものも有りますが、すでに一定の効果は報告されており、がん3大療法(手術、化学療法、放射線療法)の『代替療法』として、さらなる発展が期待されています。
以下、主要なレーザー治療について簡単にご説明いたします。

1.外傷治療・疼痛管理

レーザーというと、何かを焼いてしまうようなイメージを持たれるかもしれません。
しかし、生体が熱として感じないレベルの出力のレーザー(低出力レーザー)を照射すると、創傷治癒の促進、炎症抑制、鎮痛効果が得られます。
これが、レーザーを用いた外傷治療・疼痛管理です。
レーザーの創傷治癒の促進、鎮痛効果、炎症抑制効果のメカニズムについては、近年かなりの部分が解明されてきています。
これらは、生体が元来持っている組織修復能力が、レーザーによって数珠つなぎに引き出されてくるような機序となっています。

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2. 体表の小さい腫瘤の除去

レーザーによって、局所麻酔下あるいは無麻酔で、体表の小さい腫瘤の切除・蒸散がより少ない痛みで行うことが出来ます。
半導体レーザーメスは、従来の電気メスなどに比べて非常に高温に達するため、皮膚表面の神経が痛みを感知する事が少なくなります。
この作用が、動物に負担の少ない治療を可能にしています。

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3.がん治療

がん細胞は、正常細胞に比べて異なる点がいくつか存在します。そのひとつが、温度に弱いことです。
その特性に着目した温熱療法、さらには光線力学治療(こうせんりきがくりょうほう,Photodynamic Therapy, PDT)が、レーザーによるがん治療です。
がん治療は、3大療法(外科手術、化学療法、放射線療法)が原則となっています。
しかし、腫瘍の発生状態や動物側の様々な理由により、3大療法が困難な場合も数多くあります。
その場合の代替療法のひとつとして、レーザー治療は成果をあげています。
例えば、外科手術による摘出が困難な場所に発生した腫瘍には、光線力学療法が活用されています。
光線力学療法とは、光増感剤(光に反応して活性酸素を誘導する薬剤)を用いた療法です。
すなわち、生体内に光増感剤を注入するとがん組織細胞に集まる傾向があるため、これをあらかじめがんをもつ動物に投与した後、がん組織細胞に体表からレーザーを照射します。
すると、レーザー光に反応して、光増感剤から活性酸素が発生し、がん細胞が壊死するというものです。
この療法は、正常な組織を傷つけることなく深部のがん細胞に傷害を与え、しかも副作用が非常に少ないことが大きな利点です。

文責:田辺獣医科病院